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2009年 中学入試に選ばれた一冊(7)

091106支援室だより

2009年の中学入試で出題された書籍をご紹介する「中学入試に選ばれた一冊」。今回からは、論説・説明文をご紹介していきたいと思います。

「友だち幻想」(菅野仁著)<ちくまプリマー新書>

本書は、
第1章 人は一人では生きられない?
第2章 幸せも苦しみも他者がもたらす
第3章 共同性の幻想―なぜ「友だち」のことで悩みは尽きないのか
第4章 「ルール関係」と「フィーリング共有関係」
第5章 熱心さゆえの教育幻想
第6章 家族との関係と、大人になること
第7章 「傷つきやすい私」と友だち幻想
第8章 言葉によって自分を作り変える
の8つの章で構成され、「友だち」のことで悩んでいる若い読者への「人と人とのつながり」について見直すきっかけを提示しています。

著者は、現在、宮城教育大学教育学部の教授で、専攻は「社会学」。筆者は、序文にあたる「はじめに」で、「友人重視志向」の日本の高校生について触れています。日本、アメリカ、中国、韓国の高校生に「若いうちにぜひやっておきたいことは何か」という質問をしたところ、日本の高校生は、「一生つきあえる友人を得たい」「人間関係を豊かにしたい」という回答の割合が他の三国に比べて突出していたそうです。一方で、現実にあるいじめや引きこもりなどの社会問題。人との親しいつながりを重視すると同時に、人間関係に悩み、問題を抱える、特に若い世代の人たちに、専門である社会学の見地から、「現代社会に求められる親しさとはどのようなものか」をとらえ直す「見取り図」を描いています。

第1章では、「人は1人では生きられない?」という問いかけに対して、「1人でも生きていくことができてしまう社会だから、人とつながることが昔より複雑で難しいのは当たり前だし、人とのつながりが本当の意味で大切になってきている」と述べ、「つながりの問題は、こうした観点から考え直したほうがよさそう」だと続けています。

さて、著者が対象と考えているのは、高校生くらいの世代の、まさに、友だち関係に悩んでいる人たちだと思いますが、中学入試で出題されているところに、この友人関係に関する現代日本の問題が、さらなる若年層にも及んでいるということも考えられます。各章の中には、「心が休まらない『メール即レス』」や、「同調圧力-友情が脅迫になる」「『話せばわかる』も幻想」「恋愛こそ幻想を持ちやすい」など、インパクトのある小見出しが踊っていますが、内容は、若い世代向けということで、ひじょうに分りやすい、ソフトな文体で書かれていますし、専門用語の羅列でやたら格式ばった文章ではありませんので、小学生高学年であれば読みやすいのではないかと思います。

海外に長くいらっしゃって、帰国後の生活がまだ短い方、もしくは、現在も海外にいらっしゃる方、日本の若い世代の人たちがどんなふうに人間関係に悩み、そして、どんな問題をかかえているのかを知る手がかりにもなりそうです。

【2009年入試で出題のあった学校】
・聖光学院(神奈川県)・大妻多摩(東京都)・立教女学院(東京都)

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