2009年8 月 のアーカイブ
2009年8 月31日 月曜日
090831支援室だより
算数にみる日本語(小学1年生編)Part II
「算数にみる日本語表現(小学1年生編)」の第2回目は、「ひきざん」です。小学校1年生で学習する「ひきざん」では、「10までの数」のひきざんにはじまり、「14-9」などの、「20までの数ひく1ケタの数」のひきざん(くりさがり)までが学習範囲になっています。たしざんの概念に「合併」「添加」の2つがあることは昨日ご紹介いたしましたが、ひきざんには、3つの演算の種類があります。
【求残(きゅうざん)】
ある数からいくつかの数を取り去った「残り」を求める計算で、ひきざんの基本にあたります。いうまでもありませんが、たしざんが「数が多くなる」「増える」のに対して、ひきざんの基本は、「数が少なくなる」ことですから、どのような表現であっても、「へっている」という理解ができることですね。
「へる(へらす)」「とる」と、いくつ「のこるか」が表現の基本です。
教科書の問題
例1)「いちごが7こあります。5こたべました。のこりはなんこですか。」
つぎに、「求残」の考え方の発展形として「求補(きゅうほ)」の演算です。
【求補(きゅうほ)】
あるグループの中で、Aという種類とBという種類が混在するときに、AとBは互いに「補数」と呼びます。「AはBの補数」であり、「BはAの補数」でもあります。ひきざんによって、この補数を求めることを「求補」といいます。
教科書の問題
例2)「うさぎが8ひきいます。(そのうち)白うさぎは3びきです。黒うさぎはなんびきですか。」
例1)2)を比較しますと、1では、すべてが「いちご」ですが、2では、「白」「黒」が2種類あるという違いです。子どもたちは、単純にひきざんの学習をしているときは、与えられた数を用いて、「ひく」つまり、「数をへらす」という作業をしますので、表面上は理解しているようにみえても、なぜ、ひくことで答えが求められるのかをしっかり理解しておかなければなりません。ただ、全体からあるまとまりを「とる」=「ひく」ことで答えを求めるという点では、「求残」も「求補」も違いはありません。注意してほしいのは、「求補」には、「のこりはいくつ」という表現がないことです。例をもうひとつ挙げます。
例3)「おたんじょうかいに、9にんのおともだちがきました。そのうち、男の子は4にんでした。女の子はなんにんですか。」









【求差(きゅうさ)】
2つの数や量の違い(差)を求める演算で、ひきざんの文章題ではもっとも理解の難しいものです。
教科書の問題
例4)にわとりが8ひきいます。うさぎが3びきいます。どちらがなんびきおおいでしょうか。











「求差」とは、2つの数は量が「いくつちがうか」(ちがいはいくつか)という「差」を求める演算なので、「数がへる」「すくなくなる」という表現はいっさい出てきません。基本的な表現は、「ちがいはいくつですか」ということになりますが、「どちらがいくつおおいですか」という表現も、この「求差」の問題です。「へる」「とる」などの表現がなくとも、「ひきざん」で答えを求める計算なんだということをきちんと理解させることが重要になります。
ご家庭での指導の際、ご注意いただきたいことは、ひきざんだからといって、「大きい数から小さい数を引けばいいんだよ」というアドバイスは避けるということです。確かに答えは導くことができますが、たしざんもひきざんも、同じ種類のもの同士でなければ、成立しません。考え方を定着させるためには、具体物や半具体物(記号)を用いて、1対1対応させながら、「差」を理解させるように注意が必要です。
例5)
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ (にわとりのかず)
△ △ △ (うさぎの数)
「-」の数が1対1対応、○の残りの数が「差」。1対1対応の数だけ全体からひけば、違いを求めることができます。
2009年8 月29日 土曜日
090829支援室だより
算数にみる日本語(小学1年生編)Part I
今回は新しいテーマです。現地校、国際校に低学年から通っていて、日本語による教科学習がままならない方に特にお読みいただきたい内容です。
どの言語で勉強していようが、国や地域による進度の差こそあれ、根本的な学習内容に大差があるわけではないと思います。しかし、日本語には日本語特有の言い回しがあり、その表現理解ができなければ、結果にたどりつけないことはたぶんに生じることでしょう。算数の文章題を例にとると、意味がわかれば計算なんて問題なくできるのに、文章そのものの意味が捉えられない、ということがしばしば原因となってしまうということです。これは、なにも海外子女の方特有のことではなく、国内にいても読解力、とりわけ、筋道立てて文章を読み取ることが出来ない生徒に見られる傾向です。
ここでは、海外子女で、日本語の教科書にあまり触れる機会がないお子さまをおもちの方に、学年をおって、どんな表現で問題が記述されているのかをご理解いただきたいと思います。まずは、小学1年生編です。教科書は、「東京書籍」発行の「新しい算数」を引用させていただきました。
2011年から完全移行する指導要領の前倒し期間で、2009年度より学習内容は改訂されていますが、小学校1年生では、
1)「かずのなまえ」
2)「0~10の理解」
3)なんばんめ
4)一ケタの「たしざん」「ひきざん」の導入
5)二ケタの数(20までの数)
6)3つの数の計算
7)くりあがりの計算(一ケタどうし)
8)くりさがりの計算(二ケタひく一ケタ)
9)20より大きい数
10)たしざんとひきざん(応用)
※図形をのぞく
という年間シラバスになっています。
さて、テーマにしている「日本語での表現」です。まず、「かずのなまえ」では、「0」の読み方ですね。
「ゼロ」ではなく、日本語では、「れい」と読まなければなりません。もっとも、厳密にする必要はありませんけれども、「ゼロ・イチ・ニ・サン・・・・」ではなく、「れい・いち・に・さん・・・・」が正しい読み方だということを知っておく必要はあります。国内でも、子どもたちは「ゼロ」と発音しますね。しかし、テストの点数で「0点」を「れいてん」とは読みますが、「ゼロ点」と読む人は皆無ではないでしょうか。ふだんの生活で、たとえば電話番号を読み上げるときなど、注意して「れい・よん・ご」(045)の「○○○-××××」みたいに読む習慣が必要なのかもしれません。
つづいて「たしざん」です。数の概念を理解していく課程では、「具体物」⇒「半具体物」⇒「数字」という段階的な記号化をしていきます。小学校入学前であっても、単純な計算のみであれば、数字をつかったとしてもあまり無理なく理解できるでしょう。なので、簡単に取り扱われやすい計算ですが、実は、「たしざん」の概念には、つぎの2つがあります。
1)合併(同時に存在しているものを、いちどきにあわせる)
2)添加(あるものに別のものが加わる)
このことが、ひとくちに「たしざん」といっても、さまざまな文章表現になって表れることに関連します。
1)合併の場合
「あわせる」ことです。ですから「あわせていくつですか」「あわせるといくつですか」という問いが基本になります。ほかに、「みんなでいくつ」「ぜんぶでいくつ」などもあてはまります。
教科書の問題です。
「あかいふうせんが4こあります。あおいふうせんが3こあります。ふうせんは、ぜんぶでなんこありますか」
2)添加の場合
「くわえる」ことです。数が「ふえる」ので、これも「たしざん」ですね。さまざまなシチュエーションにおうじて、表現がことなります。たとえば、「鳥が2わいるところに、4わくるとなんわになりますか。」とか「チューリップが花びんに3ぼんあります。4ほんいれるとなんぼんになりますか」などです。
教科書の文章問題では、
「こどもが7にんいます。3にんきました。こどもは、みんなでなんにんになりましたか。」
「めだかを9ひきかっています。7ひきうまれました。めだかは、みんなでなんびきになりましたか。」
(くりあがりの計算)
などがあります。
計算自体は難しいものではありませんが、表現するところの意味を理解することができなければ、高学年になってから、応用問題に対処できなくなる可能性が高まってしまいます。
次回は、「ひきざん」にみる文章表現とその意味からつづけます。
2009年8 月27日 木曜日
090825支援室だより
2009年 中学入試 人気作家(論説・説明文編)
海外在住の方の、図書選びの一つの参考として「中学受験で出題の多い作家・著者」をご紹介する第2弾です。海外ご在住の方のみならず、国内在住の方の、中学受験にむけた読書の基準としてもご参考いただけけるかと思います。8/21の「文学編」に続いて、本日は「論説文」「説明文」のカテゴリーでご紹介いたします。前回も述べましたので繰り返しになりますが、「中学受験で出やすい」から読むのではなく、読書を通して幅広い知識を身につけ、読書を通して日本語の理解力を高めるという意味で、ぜひ参照していただきたいという思いでご紹介しています。
小説・物語に比べますと、論説文や説明文では、人気のある著者というよりは、テーマによって出題頻度の高いものが挙げられるかと思います。文章読解力をつけるには、どの言語でも同じことがいえると思いますが、良書を多読することにつきると思います。特に論説(評論)系の文章が難読だと感じている方にとっては、同系統のテーマを扱った文章を数多く読むこと、そして、テーマに関連する知識、語い、そして、筆者が問題提起している現在の状況に関して、自身との関連づけができる力を身につけることを意識してほしいと思います。自分自身の問題意識をもったり、筆者とは異なる立場から自分自身の考えをまとめたりするなど、小説や物語とは異なる理解力、思考力が必要だということを前提として、より多くの著書にふれてください。しかしながら、小説に比べて、とっつきにくい、身近でないという印象が論説系の文章にはつきものですね。そこで、今回は、テーマ別にして、さらに、出版元まで併記いたしますので、どの出版社が刊行している書籍が読むのに望ましいのかもご参照いただけるのではないかと思います。
【環境問題】
ここ数年の傾向として、安定的(?)に出題が見られるのが環境問題に関連した著作です。
●只木良也「森林はなぜ必要か」(小峰書店)
●槌田劭(つちだたかし)「地球をこわさない生き方の本」(岩波ジュニア新書)
●八太昭道「ごみから地球を考える」(岩波ジュニア新書)
●森住明弘「環境とつきあう50話」(岩波ジュニア新書)
●宮脇昭「森よ生き返れ」(大日本図書)
●富山和子「生きているシリーズ」(講談社青い鳥文庫)
●佐原真「遺跡が語る日本人のくらし」(岩波ジュニア新書)
などは、毎年どこかの学校で出題がみられる、中学入試では定番となっている著書です。
今年は、上記以外に、
●小泉武夫「いのちをはぐくむ農と食」(岩波ジュニア新書)
※湘南学園・城北・日本大学第三
●島村英紀「地球環境のしくみ」(さえら書房)「地球がわかる50話」(岩波ジュニア新書)
※順に、跡見学園・日大豊山
●甲斐徹郎「自分のためのエコロジー」(ちくまプリマー新書)
※かえつ有明・京華
などの出題がありました。
【人生学・哲学・社会学】
この分野からの出典も欠かさず見られます。小学生には難解にちがいありません。しかし、中学受験では、当然にように毎年出題があります。
●五木寛之「生きるヒント」(角川文庫)
●河合隼雄「こころの処方箋」(新潮文庫)
●森毅「まちがったっていいじゃないか」(ちくま文庫)
などが、これまでによく出題されたタイトルです。
今年は、
●池内了「時間とはなにか」(講談社)
※茗溪学園・関東学院
●石原千秋「未来形の読書術」(ちくまプリマー新書)
※渋谷教育渋谷・早稲田
●佐倉統・古田ゆかり共著「おはようからおやすみまでの科学」(ちくまプリマー新書)
帝京大学中・東洋英和女学院
●菅野仁「友だち幻想」(ちくまプリマー新書)
※聖光学院・大妻多摩・立教女学院
などが複数の学校で出題のあった著作です。
【言語・文化】
言語とは、おもに日本語の文化的特徴を解説した文章です。このジャンルも数年来絶えることなく出題が続いています。
●外山滋比古「新編ことばの作法」(PHP文庫)「日本語の個性」(中公新書)
●森本哲郎「日本語表と裏」(新潮文庫)
●池上嘉彦「ふしぎなことばことばのふしぎ」(ちくまプリマーブックス)
●大野晋「日本語練習帳」(岩波新書)
●森山卓郎「コミュニケーションの日本語」(岩波ジュニア新書)
などは定番中の定番といえます。
今年度でみると
●外山滋比古「思考の整理学」(筑摩書房)
※麗澤・春日部共栄
●加藤秀俊「人生にとって組織とはなにか」(中公新書)「なんのための日本語」(中公文庫)
※順に、昭和学院秀英・聖学院
●鷲見徹也「大切なことばいらない日本語」(ポプラ社)
※江戸川学園取手
などの出題がみられました。
【説明文】
説明文でぜったいに読んでおいてほしいのは、日高敏隆氏の「春の数え方」(新潮社)「動物の言い分人間の言い分」(角川oneテーマ21)と、加藤由子氏の「ゾウの鼻はなせ長い」(講談社)あたりです。
また、1973年に初版が出版され、いまだに読み継がれている哲学分野の本では、吉野源三郎氏の「君たちはどう生きるか」(岩波書店)ですね。「生きるとはどういう意味か」という問いに対して、普遍的な何かを示唆してくれます。必読です。
2009年8 月24日 月曜日
090824支援室だより
本日は、帰国生入試トピックス第4回目、早稲田本庄高等学院の[I選抜]試験の変更点についてご紹介したいと思います。
ご存じない方のために、入学試験の概要をまずはご紹介いたします。
早稲田本庄高等学院では、4つの試験があります。以下要項からの抜粋を引用いたします。
【一般入学試験】および【帰国生入学試験】
※ 帰国生は一般入学試験と同一試験ですが、別枠での選考となります。
※ 出願資格や書類などについても、一般と帰国生では異なりますので、詳しくは学校ウェブサイトhttp://www.waseda.jp/honjo/honjo/にてご確認ください。また、海外子女.comの基本情報でも近日更新予定です。
●募集定員:(一般)男子:約130名、女子:約60名 (帰国生)男子:約20名、女子:約5名
●出願期間:1月18日(月)~1月26日(火)[消印有効]
●第1次試験:2月9日(火)英語・数学・国語(各50分)
※会場は、早稲田大学早稲田キャンパスか早稲田本庄高等学院のいずれかを出願時に選択。
●第1次合格発表:2月12日(金)
●第2時試験:男子:2月14日(日)面接 女子:2月15日(月)面接
※会場は、早稲田本庄高等学院
●第2次合格発表:2月16日(火)
●入学手続:2月17日(水)
【α選抜(自己推薦入学試験)】
※国内生を対象とした自己推薦入学試験です。
●募集定員:男子:約45名、女子:約10名
●出願期間:1月4日(月)~1月8日(金)[必着]
●第1次(書類選考)合格発表:1月15日(金)
●第2次選考:1月22日(金)面接 ※会場は、早稲田本庄高等学院
●第2次合格発表:1月23日(土)
●第1次入学手続:1月28日(木)学費等振込
●第2次入学手続:2月17日(水)書類提出
【I選抜(帰国生自己推薦入学試験)】
※帰国生のための自己推薦入学試験制度です(「I選抜」の“I”は“International”の頭文字です)。
日頃の学業成績と英語力、基礎学力試験おより面接の結果を総合的に評価して選抜する入学試験です。
※募集概要については、日程等はすべて「α選抜」と同様ですが、「第2次選考」が、「面接」ではなく、「基礎学力試験(数学・国語、各30分)+面接」であることが大きな違いです。
※ 出願資格や書類などについても、一般と帰国生では異なりますので、詳しくは学校ウェブサイトhttp://www.waseda.jp/honjo/honjo/にてご確認ください。また、海外子女.comの基本情報でも近日更新予定です。
さて、2009年度から2010年度の入試要項の大きな変更点は、この「I選抜」の第2次選考です。09年までは、第1次選考合格者に対して、日本語の作文試験(60分)が課されていました。2010年度入試からは、この作文にかわって、「国語・数学(各30分)」の「基礎学力試験」が実施される予定です(面接は変更なし)。
学校に問い合わせたところ、国語と数学に関しては、入学後の授業への対応力を測るために、基礎的な学力をみておきたいとのことで、問題自体はまだできていないとのことですが、目安としては「検定教科書の範囲」の学力が身についていることが、1つの判断材料になりそうです。
「I選抜」1本で出願を検討している方にとっては、一般試験で出題される難易度の入試問題への対応は必要なく、30分という試験時間を考えても、公立高校で出題されるレベルの入試問題に対応できるだけの学力があれば十分ではないかと思います。
変更初年度は、なにかと不安もつきものだと思います。しかし、みなさんが同じ条件での受験ですから、「現在の学習環境における成績を維持・伸張すること」「TOEFL、TOEIC、英検などのスコア、合格級のランクアップをめざすこと」を主眼において、かつ、日本の検定教科書レベルの基礎学力を着実に定着できる学習を維持することが合格への条件になろうかと思います。
2009年8 月21日 金曜日
090821支援室だより
海外在住の方で、お子さまに「読書をさせたい」けれども、「どんな本を読めばよいかわからない」もしくは、「選ぶのがたいへん」という方はたくさんいらっしゃるのではないかと思います。お住まいの地域に日本の本屋さんがあればまだしも、日本から送ってもらうか、インターネットを通じて購入するような環境にいらっしゃれば、なおさら、選書するのにご苦労なさっているのではないでしょうか。
そんな図書選びの一つの基準として「中学受験で出題の多い作家・著者」の作品を選ぶということが挙げられるのではないかと思います。従来から中学受験ではひじょうに多くの学校が出題に採用する文典というのがありました。たとえば、「字のないはがき」(向田邦子著)「しろばんば」「続しろばんば」「あすなろ物語」(井上靖著)「アイスキャンデー売り」(立原えりか著)「四万十川」「やまびこのうた」(笹川久三著)「少年の海」(横山充男著)「岳物語・続岳物語」(椎名誠)「高円寺純情商店街」(ねじめ正一)などなど、多くの名作が小説・物語のジャンルにおいて出典を見ています。これらの作品の中には、中学の検定教科書に採用されているものもあり、一般的に小学生の学齢ではあまり目に触れることがない作品が多いように見受けられますが、中学入試では、同世代の主人公が設定されていることもあり、また、1、2学年上のレベルの文章読解力が求められることもあって、よく出題されるという特徴があります。特に女の子は精神年齢の成長が、男子のそれよりも早く、比例して国語力も男子よりワンステップ先を歩んでいる傾向が見られますので、小学生としても十分に理解が可能な内容として出題されるのでしょう。
さて、今回は、2009年の首都圏における国立・私立中学およそ130校に採用された文章を海外子女.com独自に調査してみました。中学入試に出る可能性があるから読むのではなく、あくまでも中学校の先生が入試問題として採用するレベルの高い作品であり、また、中学としてはその文章を理解できる読解力と精神性を備えていてほしいというメッセージが出題に込められているということを理解したうえで、選書するうえでの参考にしてほしいと思います。
【2009年 出題の多かった作家】
1.重松清 11校(共立女子第二・慶應普通部・城西川越・成蹊・江戸川学園取手ほか)
2.椰月美智子 5校(慶應湘南藤沢・湘南白百合学園・東邦大東邦・頌栄女子学院・平成埼玉)
3.あさのあつこ 4校(田園調布学園・市川・頴明館・女子美術大)
3.石田衣良 4校(渋谷教育渋谷・早稲田・淑徳与野・富士見)
3.樫崎茜 4校(実践女子学園・栄東・豊島岡女子学園・和洋九段女子)
3.梨木香歩 4校(関東学院六浦・共栄学園・東海大浦安・麗澤)
7.瀬尾まいこ 3校(白百合学園・森村学園・麻布)
7.森絵都 3校(城北埼玉・足立学園・日大豊山女子)
相変わらず今年も、ダントツ1位は重松さんでした。作品はまちまちなんですが、それだけ重松さんの作品は、どれも質が高くて、中学校の先生に好まれているものばかりだということでしょうね。あさのあつこ(バッテリー)や、梨木香歩(西の魔女が死んだ)、森絵都(アーモンド入りチョコレートのワルツ)もここ数年は毎年出題されています。目新しいところでは、樫崎茜(ボクシング・ディ)瀬尾まいこ(ゴーストライターなど)が今年多く出題されたようです。来年に向けても注目かもしれません。
現在では、塾をはじめとして、こうした人気作家への対応・問題への対策が実に充実してきたこともあって、以前よりも出題頻度の高い作品は減少する傾向にありますが、それでも、まだまだ頻度の高い作家・作品はありました。ちなみにここ数年間を振り返ると、文学作品では、「重松清」「あさのあつこ」「伊集院静」「阿部夏丸」「湯元香樹実」「森絵都」「竹内真」「佐藤多佳子」「氷室冴子」などが毎年必ず顔を出すという傾向が続いていました。そして、上述した「井上靖」「横山充男」「笹川久三」「椎名誠」なども依然として出題されています。「立原えりか」さんの「アイスキャンデー売り」はさすがにもう出ないだろうな~と思っていたら、数年前に逗子開成中学で出題されて、驚いた記憶があります。今回の記事の主旨と反してきましたので、この辺りで。くり返しますが、中学受験に出題されるから読むのではなく、それだけの価値の高い本を書く作家をここではご紹介したいということで、ぜひ、図書選びの参考にしていただきたいと思います。次回は、論説・説明文の人気著者をご紹介します。
2009年8 月20日 木曜日
090819支援室だより
帰国生入試トピックス第3回目は、早稲田佐賀中学・高等学校です。
早稲田佐賀中学・高等学校は、早稲田大学が2007年(平成19年)に創立125年を迎えたのを機に、同大学の創設者、大隈重信の生誕の地である佐賀に、2010年(平成22年)4月より早稲田大学の系属校として、新たに開校を予定する学校です。
早稲田佐賀の建学の精神は、「日本という枠を超えた “グローバルリーダーの育成”」。ホームページによれば、21世紀型のグローバリゼージョンに対応できる、「高度な専門的知識、高い教養、自主的な判断ができる国際人」の育成をめざすということです。
その具体的な教育の特色を一部抜粋しますと、
※ 男女共学:共学による男女協働の精神を養う。
※ 基礎学力と応用力の養成:早稲田大学に50%が進学。他大学においてもリーダーとして活躍できる学力を養成する。
※ 国際性豊かな学校:他の国の中学校・高等学校と交流し、異文化への理解および言語の学習を行う。
※ 海外体験:早稲田大学の姉妹校(約500)により、海外でのホームステイや短期留学を推進する。
※ 寮生活による人間教育:寮生活を通して規律と自立心を養い、家庭的な友情、自主的学習習慣を身につける。
などとなっています。
「国際性豊かな学校」という教育目標は、入試における帰国生の受入れについても反映されています。その入試要項は、
【中学校】 ※一部抜粋
●募集人員:若干名(男女) ※一般120名に含まれます。
●試験日:2010年1月24日(日) ※合格発表:同年1月27日(水)
●試験会場:佐賀(唐津市)
●試験教科:国・算・社・理(4教科)
●受験資格:下記条件をすべて満たすこと
1.(1)海外滞在期間が継続して1年9カ月以上3年未満の場合:帰国日(予定日含む)20091月1日以降
(2)海外滞在期間が継続して3年以上の場合:帰国日(予定日含む)2008年1月1日以降
2.1997年4月2日から1998年4月1日までに生まれていること
3.海外勤務者を保護者とする帰国生で、日本国籍を有し、本校への入学を希望していること
4.2010年3月までに、国の内外を問わず、学齢相当の6ヵ年の学校教育課程を修了または修了見込みであること
5.入学後、学校からの緊急連絡などに対応できる保護者等が日本国内に居住していること
※ 入学後は一般の受験者と同一の学級に組み入れ、帰国生徒のみの特別学級は編成しない。
【高等学校】 ※一部抜粋
●募集人員:若干名(男女) ※一般120名に含まれます。
●試験日:2010年1月31日(日) ※ 合格発表:同年2月3日(水)
●試験会場:佐賀(唐津市)
●試験教科:国・数・英・社・理(5教科)
●受験資格:下記条件をすべて満たすこと
1.(1)海外滞在期間が継続して1年9カ月以上3年未満の場合:帰国日(予定日含む)20091月1日以降
(2)海外滞在期間が継続して3年以上の場合:帰国日(予定日含む)2008年1月1日以降
2.1994年4月2日から1995年4月1日までに生まれていること
3.海外勤務者を保護者とする帰国生で、日本国籍を有し、本校への入学を希望していること
4.2010年3月までに、国の内外を問わず、学齢相当の9ヵ年の学校教育課程を修了または修了見込みであること
5.入学後、学校からの緊急連絡などに対応できる保護者等が日本国内に居住していること
※ 入学後は一般の受験者と同一の学級に組み入れ、帰国生徒のみの特別学級は編成しない。
海外子女のみなさんにとっては、
●早稲田大学の系属校が1つ増える(現在は、早稲田実業・早稲田中高・早稲田摂陵)
※ 50%の推薦枠があるほか、他大学への進学指導も。
●男女とも寮がある(本帰国前の受験が可能)
●同一試験とはいえ、帰国生選抜がある
●高校からも入学できる
など、たくさんのメリットがあると思います。
しかし、一方で、英語圏、非英語圏かかわらず、現地校、国際学校に通っている方にとっては、中学で4教科、高校で5教科の受験対策は、相当な学習負担になろうかとも思いますので、とくに滞在年数が3年未満の対象の方は、現地でどれだけ主要教科の受験対策ができるか、また、合格発表が中学・高校とも、2月試験の前ですので、どの学校と併願を組み立てるかなどが、受験を検討するうえでのポイントではないでしょうか。
2009年8 月18日 火曜日
090818支援室だより
14日(金)に、終戦の日にちなんで「読ませておきたい一冊」というタイトルで、「ちいちゃんのかげおくり」(あまんきみこ著)、「一つの花」(今西祐行著)、「夏の葬列」(山川方夫著)をご紹介いたしました。今日は関連がないのですが、太宰治の「走れメロス」をご紹介したいと思います。
う~ん、「太宰治」の原作については、今更ここでご紹介するまでもないのですね。昭和15年に発表され、中学国語の教科書でも採用されていますから、読書に興味のない方でも、一度は読んだことのある、あるいは、ストーリーに覚えがある作品ではないかと思います。
笛を吹き、羊と遊んでその日を暮らす牧人のメロスは、妹の婚礼のしたくのために訪れた街で、人間不信から、次々と罪のない市民を虐殺する(邪智暴虐の)王に激怒して、王を殺そうとします。そこで捕らえられたメロスは、妹の祝言をあげた3日の後に戻るといいますが、人間不信の王にその許しを請うために、町に住む竹馬の友であるセリヌンティウスを人質に差し出し、信じぬ王に人間の真実をつきつけるために、3日後に自らの命を捧げるべく妹の挙式を済ませ、再び王のいる町に向って疾走します。
ということで、テーマは、「友情」「正直」「信用・信頼」「正義」などということになるのでしょうか、というようりは、私個人としては、太宰の文章力のうまさをぜひ味わっていただきたいと思うのです。
それで、最近「Run, Melos! and other stories」という、「走れメロス」をはじめとした、太宰の短編を英訳した文庫本が出版されましたので、英語圏で勉強されている方には、まず、こちらで、内容を理解したうえで、原作を読むというのはどうかな、と思い、ご紹介いたします。
翻訳者の力量なんでしょうが、ひじょうに丹念に翻訳が行われています。原作を理解するうえで、実に読みやすく、原文の醍醐味が十分に味わえるのではないかと思います。
ほかに、「富嶽百景」「女生徒」「東京八景」などが英文で収録されています。日本の中学に相当する学年の方ならば、「走れメロス」以外はあまり面白くないかもしれません。太宰が好きなお父さま・お母さまにも一緒に読んでいただきたい一冊です。
ちなみに、「走れメロス」については、壇一雄の「小説 太宰治」の中に、執筆に際しての「その重要な心情の発端」となるエピソードが書かれていて(おそらく事実であろうと思われる)、実に興味深いので、あわせてご紹介しておきたい一冊です。
さらに、1992年に劇場公開されたアニメ映画では、かなり違った視点で「メロス」の人間像が描かれていますので、小説を気に入ったら、こちらもご覧になるとよいでしょう。
2009年8 月14日 金曜日
090814支援室だより
今だから読んでおきたい本
明日は8月15日です。日本は、64回目の終戦の日を迎えます。現在40代半ばのわたしにとっては、実体験のない戦争なのですが、不況にあえぐ今の日本でありながらも、確かな平和と安寧を享受できる「今」の暮らしは、あの戦争での多くの犠牲なくしてはなかったのだろうなと思います。日々の営みの中で、そのことに思いをはせることはありませんが、この、64年前の「敗戦」を境にして、この国が歩んできた道程を思い、また、多くの犠牲となった方々への哀悼の気持ちをもって、明日を迎えたいと思います。
直接体験のない戦争ではありますが、われわれもまた、次の世代、その次の世代に、また受け継いでいかなければならない義務のようなものを感じます。至って凡人のわたしは、多くを語るすべを持っていませんので、代わりに「今、このときだからぜひ読んでおきたい、読んでほしい」本を数冊ご紹介したいと思います。多くの著書の中で本日ご紹介するタイトルは、教科書に採用されている(もしくは、されたことのある)ものにしました。ご父母の中には、ご自身が読まれたこともあろうかと思います。「なにか本を読ませたいな」と思ったときに、たとえ、今でなくとも、ぜひ、一度お子さまに勧めていただき、一緒に話をし、過去と現在、そして、未来の自分たちの役目について、子どもたちにもなにか思いをはせてもらいたいなぁと思います。
【小学校低中学年】
「ちいちゃんのかげおくり」(あまんきみこ著)
あまりにもせつない話ですが、戦争がたくさんの幼い命を奪っていったこと、二度とくり返してはならないことを、改めて感じさせられる作品です。
「『かげおくり』って遊びをちいちゃんに教えてくれたのは、お父さんでした。」
(中略)
「『ああ、あたし、お腹が空いて軽くなったから、浮いたのね。』
その時、向こうから、お父さんとお母さんとお兄ちゃんが、笑いながら歩いてくるのが見えました。
『なあんだ。みんな、こんな所にいたから、来なかったのね。』
ちいちゃんは、きらきら笑い出しました。笑いながら、花畑の中を走り出しました。」
ことばがありません、切なすぎます。
【小学校中高学年】
「一つの花」(今西祐行著)
「『一つだけ、ちょうだい。』これが、ゆみ子のはっきりおぼえた、最初のことばでした。」
戦争がはげしさをまし、食料の配給によって思い通りに物資が手に入らなくなるころ。幼いゆみ子の口ぐせは、「一つだけ、ちょうだい」。ついに、ゆみ子のおとうさんにも召集令状がとどき、出征の日を迎えます。おかあさんとゆみ子と二人でおとうさんを駅で見送る場面です。
「おとうさんは、プラットホームのはしっぽの、ごみすて場のようなところに、わすれられたようにさいえていた、コスモスの花を見つけたのです。あわててかえってきたおとうさんの手には、一りんのコスモスの花がありました。『ゆみ。さあ、一つだけあげよう。一つだけのお花、だいじにするんだよう・・・・・・。』
ゆみ子は、おとうさんに花をもらうと、きゃっ、きゃっと、足をばたつかせてよろこびました。
おとうさんは、それを見て、にっこりわらうと、なにもいわずに汽車にのって行ってしまいました。ゆみ子のにぎっている一つの花を見つめながら・・・・・・。」
【小学校高学年~中学】
「夏の葬列」(山川方夫著)
ある夏の日に葬列を見物しに行った「彼」と「ヒロ子さん」。突然の空爆に襲われ、「彼」をかばってくれた「ヒロ子」さんを銃撃にさらしてしまいます。死に至らしめた罪の意識を持ち続けたまま、終戦後サラリーマンになった「彼」。十数年ぶりにその現場を訪れた「彼」の目の前を再び「夏の葬列」が通り過ぎていきます。
「助けに来てくれた少女を、わざわざ銃撃の下に突き飛ばしたあの夏、殺人を犯した、戦時中の、あのただ一つの夏の季節だけが、いまだに自分を取り巻き続けているような気がしていた。」
「まちがいはなかった。彼は、自分が叫び出さなかったのが、むしろ不思議なくらいだった。 おれは、人殺しではなかったのだ。 彼は、胸にわき上がるものを、懸命に冷静に抑えつけながら思った。たとえなんで死んだにせよ、とにかくこの十数年間を生き続けたのなら、もはや彼女の死はおれの責任とはいえない。少なくとも、おれに直接の責任がないのは確かなのだ。」
思いもよらぬ衝撃の結末が彼を待っています。中学入試でも出題が見られる作品。
2009年8 月13日 木曜日
090811支援室だより
「入試によく出る漢字Part VII」は、【同訓異字】です。
以下、入試の国語でご紹介した部分を再度引用いたします。
『ウィキペディアによれば、
1)字義がほぼ同じで、同様の使い方ができる漢字
2)字義が類似しているが、違いがあり、書き分けられる漢字
3)字義がまるで異なるが、たまたま訓では同じ読みをする漢字
の3つの区別があります。1の例では「練る・錬る・煉る」などは、もともと意味の異なる漢字ですが、現在では厳密な使い分けがなされていないという字です。
入試で出題される度合いが高いのが、2と3のケースですね。
2の例では、「表す・現す」「測る・計る・量る」、3の例では「表す・著す」「測る・図る」です。
2の場合は実にやっかいで、「表す・現す」を似た意味として組みあせた「表現」や、「測る・計る・量る」を組み合わせた「計測・測量・計量」などの熟語が存在するので、どう使い分けるのかをしっかり覚えておかなければ、いざというときに混乱してしまうことでしょう。
ちなみに、「表す」は「形のないものを目に見える形にする」で、「現す」は「形はもともとあったが、目に見えていなかったものが見えるようになる」という違いで理解しておくとわかりやすいと思います。「感謝の気持ちを言葉に表す」「犯人が姿を現す」という感じですね。「著す」は書物を書くことですから、まったく意味が異なります。「はかる」は
「測る」⇒長さ・深さ・面積など
「計る」⇒数・時間
「量る」⇒重さ・容積など
「図る」⇒工夫する・考えるという意味でたまたま訓読みが同じ
という違いがあります。』
ということなんですが、ほかにもたくさんの「同訓異字」が日本語には存在しており、「さす」を例にとると「刺す・指す・差す・挿す・射す」、「とる」に至っては「取る・採る・捕る・執る・摂る・撮る・録る・獲る・穫る・盗る」と、同じ訓読みなのに、こうも異なる漢字があるのです。もちろん、小学生配当漢字以外は最近の中学入学試験では、ほとんど出題されることがなくなってきましたので、「挿す」や「執る」「摂る」「撮る」「捕る」などは気にしなくてもよいのですが、「腰に刀をさす」など、実際に入試で出たことがありますので、基本となる使い分け、意味の違いはしっかりと押さえて学習しておきましょう。では、09年度の入試問題における「同訓異字」です。じっくりご覧になれば、「オサメル」「ヤサシイ」「ソナエル」など複数の学校での出題がお分かりいただけると思います。
[東京学芸大附属世田谷]
発表会の司会をつとめる
[市川]
スクリーンに画像をウツす。
[神奈川大附属]
アタタかいスープをいただく。
[関東学院六浦]
災害にソナエル
[慶應中等部]
入学金をトトノえる。
[埼玉栄]
船をツクる。
[自修館中等教育]
仏前に花をソナえる。
[専修大松戸]
ヤサしい問題から解いていく。
[玉川学園]
会社をオコス。
字を書きアヤマル。
[日本大学第二]
次の線部のカタカナを漢字に直したときに、他と異なる漢字を用いるものを一つ選び、記号で答えなさい。
(1)
ア 堤防で暴れ川をオサメる。
イ 運動会で勝利をオサメる。
ウ 期待以上の効果をオサメる。
エ 楽器をケースにオサメる。
(2)
ア 憧れの職業にツく。
イ 列車が駅にツく。
ウ 家に荷物がツく。
エ 合図で座席にツく。
(3)
ア 力任せに扉をオす。
イ 彼を委員長にオす。
ウ 書類にはんこをオす。
エ もう一度念をオす。
(4)
ア 徹夜しても若いうちは無理がキく。
イ 犬は人間よりもはるかに鼻がキく。
ウ 彼女の活躍ぶりを風の便りにキく。
エ うまくいくように先生が口をキく。
[明治大付属明治]
薬がよくキく。
[鎌倉学園]
今年の夏は得にアツい。
[立教池袋]
部屋の置き差をハカる。
[鴎友学園]
シオの流れが速いので、船を出すのをやめた。
[鎌倉女学院]
相模湾のシオの流れ
大地震にソナエル。
[北鎌倉女子学園]
紙がヤブれる。
台風にソナえる。
成果をオサめる。
[共立女子]
昼食後に飲んだ薬がキいてきたようだ。
[淑徳与野]
ヤサしい問題から解く。
[湘南白百合学園]
布をはさみでタつ。
折れた骨を病院でツいでもらう。
[玉川聖学院]
国に税金をオサめる。
枝をオる。
作戦をネる。
[東京女学館]
出発がノびる。
庭で犬をカう。
2009年8 月12日 水曜日
090812支援室だより
【同音異字・同音異義語】の3回目です。
1・2回では、独立問題として出題のあった学校をご紹介いたしましたが、本日は、漢字の書き取り問題の中で、一部に同音異義語が見られる問題をご紹介いたします。
この形式での出題は、どんな漢字で間違えるのかわかりづらいので、それぞれの問題に解説を加えます。
[桜美林中学校]
相手のキセイをそぐ。
「キセイ」には、「規制」「帰省」「気勢」「既成」などがありますが、この場合に間違えやすいのは、「規制」「帰省」ですね。この場合は、相手の「いきおい」を止めるという意味です。
わたしにとってゼッコウのチャンスだ。
「ゼッコウ」には、「絶好」と「絶交」があります。意味を考えればさほど難しくはありません。
[神奈川大附属中学校]
グンシュウ心理によるものだ。
「群集」と「群衆」があります。意味の違いがとりづらい同音異義語です。
「群集」は「集まること」を意味し、「群衆」は「集まった人々」のことを表します。この違いをしっかり理解していれば、実は難しくありません。「グンシュウ心理」とは、「集まったときの心理」という意味で、人々のことではありません。
[関東学院六浦]
エイセイ的でない場所。
「衛星」「衛生」「永世」です。ひじょうによく出題されます。
意味は明らかに違いますから、不用意なミスをしないようにしましょう。
[慶應中等部]
不思議なゲンショウ。
意外な感じがしますが、これもたまに見かける出題です。「現象」と「減少」です。どちらもおかしくないようですが、一般的な用法の問題で、正解はもちろん「現象」です。「現象」を「現像」と書き間違えるミスも散見されます。
[國學院久我山]
プレゼントをホウソウしてもらう。
「ホウソウ」はあまり多くは出題されませんが、「放送」「包装」の違いです。意味の上での違いというよりも、漢字の書き取りの知識問題と考えたほうがよさそうです。
[埼玉栄]
彼の言葉にカンシンを持った。
お茶の水女子大・湘南学園でも出題のあった問題です。
「カンシン」には、「関心をもつ」「感心する」「寒心に堪えない」「歓心を買う」の四つがありますが、特に出題の多いのが、「関心」「感心」です。文脈上、意味の違いに注意しておけば間違えることはないと思いますが、要注意です。
商品をハッソウする。
「ハッソウ」は、「発送」「発想」。この場合はもちろん「発送」です。
[玉川学園]
小学生を対ショウに調査した。
頻出です。後述する「捜真女学校」「玉川聖学院」での出題が見られますが、毎年どこかの学校で必ず出題されます。「対象」「対照」の2つの違いの認識と「対称」まで使い分けられればベストです。
「対照」はほとんどの場合、「対照的」の使い方で出題されることが多いようです。
[捜真女学校]
「自然観察会」は、秋は高齢者をタイショウに開かれている。
[玉川聖学院]
私と妹はタイショウ的な性格です。
[山手学院]
ガイトウで演説する。
「街頭」「街灯」「外灯」の違いを押さえておきましょう。とくに「街灯」「外灯」の違い。「街灯」は道路や商店街などの人々の交通などの利便性のためにともされるものですが、家の庭にあるものでも、屋外にあるものはすべて「外灯」です。
[鎌倉学園]
カイシンのほほえみを浮かべる。
これも出題頻度は高い漢字です。
改心:こころをすっかり入れ替えること
会心:満足すること
とくに「会心」がよく出題されるように思います。
[逗子開成]
組織のキノウが低下する。
「昨日」「機能」の違いです。よく問題文を読まずに、うっかり「昨日」としないように注意してください。
切手をシュウシュウする。
これもよく出題されます。「収拾」「収集」の違いです。
収拾は、「混乱を収める」という意味で、収集は、ものを集めるという意味の違いですが、小学生ですとけっこうよく間違えます。なぜならば、前後の漢字の音がともに「シュウ」であって、漢字を逆さまにする間違いが起こりやすいからなのです(「救急」も同様です)。
[立教池袋]
検討のヨチがある。
「ヨチ」には、「予知」と「余地」があります。意味はまったく異なりますので、「余地」の意味をしっかり押さえておきましょう。
[江戸川女子]
犯人をツイキュウしたが逃げられた。
これも頻出。
「犯人をツイキュウする」場合は、「人や責任を追いつめる」という意味の「追及」が正解です。
ほかに「理想や幸福」を「追い求める」ときの「追求」、「ものごとを明らかにする」意味の「追究」があります。
[桜蔭]
ヨウイには見いだしがたい。
「用意」「容易」の違いです。まったく意味が異なりますが、けっこう出題を見ます。とくに「容易」は類義語として「簡単」もあわせて覚えておくと意味も理解しやすいと思います。
[晃華学園]
義務教育のカテイを終える。
「家庭」「課程」「過程」の違いです。「課程」は「ある期間の学業や仕事」を表し、「過程」は「あるものごとの進行の段階」を意味しますので、実は明らかに意味が異なります。「教育課程」であり、「成長過程」となります。
[女子聖学院]
つぎの線部分のカタカナにふさわしい漢字をあとから選んで、それぞれ記号で答えなさい。
1 世界のジョウ勢を確認する。
2 水分をジョウ発させて塩を取り出す。
3 古くからのジョウ下町を訪れる。
4 流行に便ジョウして本を売り出す。
ア 城 イ 上 ウ 場 エ 情 オ 蒸 カ 常 キ 条 ク 乗
[玉川聖学院]
自分の考えが正しいとカクシンする。
「カクシン」には、「確信」「革新」「核心」があり、どれも出題されますので、意味の違いをしっかり把握しておきましょう。
とくに「確信」は「確心」の間違いがひじょうによく見られます。注意してください。
[目黒星美学園]
彼は多くの人の考えにイギを唱えた。
これも要注意です。「イギ」は
意義:=意味
異議:異なる意見
異義:違った意味
というやや似通った意味で、識別の紛らわしい熟語なんですね。1つひとつの意味をしっかり覚えてください。
[和洋九段女子]
カンシンを示す。※ [埼玉栄]を参照
技術のカクシン ※[玉川聖学院]を参照
校庭をカイホウする。
「解放」「開放」「快方」がよく出題されます。まれに「介抱」も出題されることがあります。
シメイを果たす。
「氏名」「指名」「使命」。よ~く、意味を考えれば間違えることはないはずなんですが、「指名」「使命」の誤用はけっこうあります。注意が必要です。
次回は、入試によく出る「同訓異字」の実際の出題校をご紹介いたします。