聖光学院(神奈川県)帰国生入試紹介
たいへんお待たせいたしました。海外子女教育支援室 須藤です。
前回の支援室だよりの続編です。前回ご紹介いたしました横浜市の有名進学校「聖光学院」の帰国生入試問題のアウトラインと解説をお届けします。
【国語】60分 100点満点
1 「ことわざ」※生き物の名のつくことわざとその意味
2 「漢字の書き取り」 危害 局地 課程 注文 気勢 ※ 課程・注文は一般入試でも頻出
3 論説文「国際協力と平和を考える50話」(森英樹 著)
4 随筆文「蜜柑」(平岩弓枝 著)
さすがに帰国生専用ということで、一般試験と比較して「基本重視」となっています。自由記述も、心情の読み取りで1題、それ以外は「~がましい」を使った短文作りで、あとは抜き出し問題ですし、帰国生に配慮した選択問題が中心になっています。ただし、易しいと感じるのはあくまでも一般試験との比較であって、帰国生にとっては、日常的に正しい日本語を使用し、たくさんの書物に親しみ、言葉のもつ重み・深みを意識した言語生活を送っていなければ、おそらく解けない問題ばかりであろうと思われます。
たとえば、“聖光名物”の5択(選択)問題。ひじょうに練られた選択文が並びます。大人でも一読して意味の違いがつかみにくい、この選択肢から正解を選ぶのは、よほど丹念に文章と向き合うという意識を普段から高めておかないと難しいのではないでしょうか。
合格者平均が71.4、受験者平均でも65.1ということは、合格のためには、65%から70%の得点を最低ラインに考えておけばよいでしょう。
次の漢字読めますか?
A 進物 B 具合 C 放り込み ※Cの『放り』は、「ほおり」で×になった子がいるはず!
「かなづかい」おろそかにしていませんか?
【算数】60分 100点満点
〔1〕 つるかめ算・差集め算・和と差の問題
〔2〕 相似比・面積比
〔3〕 速さと比
〔4〕 場合の数
〔5〕 影の問題(相似な図形)
という、大問5題構成になっています。帰国生専用の試験でありながら、中学受験のためのカリキュラム学習に取組んでいないと太刀打ちできません。しかも、〔2〕の図形問題を除いてはすべて文章題ですから、筋道立てて文章を読み取ることができる日本語力が、ここでも求められています。〔3〕速さと比の問題文をご紹介しましょう。
■□■問題■□■
〔3〕2か所のチケット販売店P,Qでは、いつも開店前から行列ができていて、両店とも同時に開店します。開店後は両店とも,毎日それぞれ一定時間間隔でチケットを1人ずつ販売していきます。このとき,次の問いに答えなさい。
(1) ある日,聖くんはP店の列に,光君はQ店の列にそれぞれ並んでチケットを購入することにしました。開店時,買う順番は聖君,光君ともに11人目でした。その後、P店でちょうど3人目の人がチケットを購入し終えたとき,Q店では2人目の人が購入をちょうど終えたところでした。
また,聖君がチケットを購入し終えてから16分30秒後に光君もチケットを購入し終えました。このとき,P店とQ店はそれぞれ何分に1人の割合でチケットを販売したかを求めなさい。
■□■問題ここまで■□■
直前まで海外にいる方にとっては、たいへんだとは思いますが、問題のそのものの難易度というよりは、むしろ内容の理解が難しいと思われます。繰り返しますが、「日本語力」です。ちなみに、合格者平均76.2に対して、受験者平均54.9。算数が合否のカギを握ります。
【英語】30分 50点満点
さあ、帰国生入試のみの科目、英語です。
算数・国語が100点満点であるのに対して、英語は50点満点と、傾斜配点になっています。
試験科目に「英語がある」という点では、現地校・国際校に通っているお子さまには有利ですし、算国:英語が、4:1の配点かと考えれば、けっして日本人学校出身の方に不利になっているわけでもない、と思います。要は、現地(国際)校に通っていた方には、英語力を武器にしつつ、その国際感覚を入学後に発揮してもらいたいという学校側の思いでもあり、入学後に学力を伸ばすには、授業についていけるだけの(算数の問題もふくめて)日本語力が必要なので、英語だけでは合格できないよというメッセージでもあると思います。
以下は、学校発行の「中学入試問題資料」からの抜粋です。
「英語の試験は例年通り、英語の運用能力を試す問題です。日本で行われる高校入試や大学入試の問題の中にあるような単に文法能力を試す問題や下線部を日本語に直させる問題はありません。英語圏で生活していた生徒を対象とした問題です。したがって、英語圏以外の帰国生にとっては対処できないかもしれませんが、特に対策をする必要はありません。国語と算数により一層の磨きをかけてください」
実際、わたしたちがインタビューさせてもらった在校生2名は、1人が現地校、もう1人が日本人学校の出身者でした。2人とも帰国生入試で合格した生徒さんです。
では、問題についてです。
大問3題で構成され、
〔I〕は英文の内容を問う客観式の問題
〔II〕は読解力や作文能力だけでなく、推理力も必要とされる問題
〔III〕は、作文能力を問う問題で、賛成か反対か、自分の立場をまず示し、その自分の意見を論理的に説明しなければならない、かなりの英語力、思考力が要求される問題
となっています。
今回は、〔II〕の文章を、学校側の解説とともに、ご紹介いたします。
■□■問題■□■
〔II〕Reading the following story and answer the question below. Answer in English.
Many years ago when a person who owed money could be thrown into jail, a merchant in London had the misfortune to owe a huge sum to a money-lender. The money-lender, who was old and ugly, fancied the merchant’s beautiful teenage daughter. He proposed a bargain. He said he would cancel the merchant’s debt if he could have the girl instead.
Both the merchant and his daughter were horrified at the proposal. So the cunning money-lender proposed that they let Providence decide the matter. He told them that he would put a black pebble and a white pebble into an empty money-bag and then the girl would have to pick out one of the pebbles. If she chose the black pebble she would become his wife and her father’s debt would be cancelled. If she chose the white pebble she would stay with her father and the debt would still be cancelled. But if she refused to pick out a pebble her father would be thrown into jail and she would starve.
Reluctantly the merchant agreed. They were standing on a pebble-strewn path in the merchant’s garden as they talked and the money-lender stooped down to pick up the two pebbles. As he picked up the pebbles the girl, sharp-eyed with fright, noticed that he picked up two black pebbles and put them into the money-bag. He then asked the girl to pick out the pebble that was to decide her fate and that of her father
Imagine that you are standing on that path in the merchant’s garden. What would you have done if you had been the unfortunate girl? If you had had to advise her what would you have advised her to do?
The girl in the pebble story put her hand into the money-bag and drew out a pebble. Without looking at it she fumbled and let it fall to the path where it was immediately lost among all the others.
‘Oh, how clumsy of me,’ she said, ‘but never mind——
Question:
Image what she said after saying ‘never maid’. Write your own idea in English.
■□■問題ここまで■□■
※ここから、学校側の解説文です。
実際の物語では最後の部分は以下のようになっています。
If you look into the bag you will be able to tell which pebble I took by the color of the one that is left.
つまり『袋の中を見れば、残った小石の色から私がどちらの小石を取ったかわかるはず』という内容です。もちろん、この通り書かなければ正解にならないという訳ではありません。実際の解答例を見てみましょう。
(解答例1)
the other pebble that I didn’t choose has to be in the money bag and that pebble has to be the opposite color that I chose. The pebble in the bag is black so that means I picked the white pebble. That means I can stay with my father and the debt is cancelled.
(解答例2)
I used a trick to pick out the white pebble. I picked the white pebble and puted inside my hand and when I picked up the pebble, I pour the white pebble in to the bag and took out the white pebble that I poured in to the bag.
解答例1は英文に多少ぎこちないところがありますが、本文の内容もよく理解できており、英語もしっかりと書けています。ほぼ満点の答案です。それに比べ、解答例2は一見解答例1と同じくらいよく書けているように見えますが、実際には一度読んだだけではなかなか理解できず、採点者が受験生の気持ちをくみ取ってあげないと意味が通じません。また英文にも多くの問題点があります。これではあまり得点できません。
この2つの例から分かるように、採点は英語として論理的に通じるかどうかが一番問題となります。些細なミスは減点しません。次年度からも問題の傾向が大きく変わることはありませんので、普段から思考力を育てながら英語力を高めていくことが重要です。
いかがでしょうか。長くなりましたが、みなさんの受験対策の参考になれば幸いです。
次回は、もう1校。共学校の「公文国際」レポートをお届けする予定です。次回もお楽しみに。
了